Gemini Flash 3.5 / 3.6 / 3.7 / 3.8 やさしい完全ガイド

2026年9月3日時点の情報をもとに作成。Gemini・ChatGPT・Claudeの3つのAIが同じ質問で調べた3本のレポートを、ひとつにまとめ直したものです。

30秒でわかる結論

Gemini Flashは「3.5 → 3.6 → 3.7 → 3.8」と、2026年5月から9月のわずか3か月半で4回も世代交代しました。4つとも「読める量」「話せる量」「扱える種類」はまったく同じで、違うのは「頭の使い方」と「値段」です。

これから新しく使う人は、迷ったら3.8 Flashを選べばまず間違いありません。ただし「大量の単純作業をとにかく安く速く」なら3.7 Flashが今も有力で、「自分専用に教え込んだAI(ファインチューニング)」が必要な人だけは3.5 Flashを選ぶ理由が残っています。3.6は、3.7と3.8に置き換えられた「つなぎの世代」です。

目次

  1. まず、言葉の意味をたとえで理解する
  2. 4兄弟の家系図(いつ生まれて、何が同じか)
  3. 各世代の物語(3.5 → 3.6 → 3.7 → 3.8)
  4. 数字で見る比較表
  5. お金の話(料金と2027年の値上げ)
  6. 速さの話(「モデルの速さ」と「考える深さ」は別もの)
  7. 3.5にしかない特技「ファインチューニング」
  8. 自分に合うモデルを選ぶ(診断チャートと用途別早見表)
  9. よくある誤解Q&A
  10. 3つの資料で食い違っていた点(正直に)
  11. まとめ

1. まず、言葉の意味をたとえで理解する

この記事を読むのに必要な言葉は、たった8つです。ここだけ押さえれば、あとは普通の読み物として読めます。

AIモデル
「AIの脳みそ」そのものです。GoogleのGeminiという脳みそには、いくつかの種類(サイズ)があります。
Flash(フラッシュ)
Geminiの中でも「速くて安い」タイプの名前です。レストランでいえば、高級フルコース(Pro)に対して、素早く出てくる定食(Flash)。以前は「安い代わりにちょっと頭が弱い」扱いでしたが、3.8ではフルコース並みの実力を持つ定食になった、というのが今回の話の核心です。
トークン
AIが文章を数える単位です。日本語だと、だいたい1文字〜数文字で1トークン。料金も「読める量」も、すべてこのトークンで数えます。「原稿用紙の文字数」のようなものだと思ってください。
コンテキストウィンドウ(読める量)
AIが一度に読める文章の量です。4モデルとも約100万トークン。長編小説を何冊もまとめて渡せる、大きな机だと思ってください。
思考レベル(thinking level)
答える前に、AIが頭の中でどれくらい深く考えるかの設定です。low(浅く・速く)/medium(ふつう)/high(深く・じっくり)の3段階が基本。車のアクセルの踏み込み具合のようなもので、深く踏むほど賢い答えが出ますが、時間もお金もかかります。
ベンチマーク
AIの「模擬試験」です。この記事に出てくる主な試験は次の通り。
・Terminal-Bench:パソコンのコマンド操作を自分でこなす試験
・DeepSWE/SWE-Bench:実際のソフトのバグを直す試験
・HLE(Humanity's Last Exam):人類最難関レベルの知識問題
・MRCR:長い文章の中から必要な情報を正確に探す試験
・CharXiv:グラフや図を読み取る試験
・GDPval:実務の知識労働(レポート作成など)の試験
API(エーピーアイ)
プログラムからAIを呼び出す「注文窓口」です。会社がアプリにAIを組み込むときはここを使い、使った分だけ料金を払います。
GA(正式提供)
「お試し版」ではなく「本番で使っていい正式版」という意味です。4モデルとも正式版です。

2. 4兄弟の家系図(いつ生まれて、何が同じか)

4つのモデルは、親子のように順番に作られました。3.6は3.5を土台に、3.7は3.6を土台に、3.8は3.7を土台に改良されています。まったく新しい脳みそに取り替えたのではなく、同じ脳みそを鍛え直したイメージです。

モデル正式提供日前の世代からの間隔ひとことで言うと
3.5 Flash2026年5月19日頭は良いが考えすぎて高くつく「新人エース」
3.6 Flash2026年7月21日63日ムダを省いた「効率化版」
3.7 Flash2026年8月13日23日速くて安くて賢い「バランス型」
3.8 Flash2026年9月2日20日難問に粘り強い「職人」

たとえ話:4人の兄弟

同じ家に生まれた4人兄弟を想像してください。体格(読める量・話せる量・扱える形式)は全員同じ。違うのは性格と働き方です。長男3.5は真面目すぎて、簡単な質問にも長々と悩んでしまう。次男3.6は長男の反省から「ムダに悩まない」ことを覚えた。三男3.7は「浅く考える・深く考える」を切り替えられるようになり、しかも一番足が速い。四男3.8は、難しい仕事ほど途中で投げ出さずやり遂げる粘り強さを身につけた、という具合です。

4モデルで「まったく同じ」ところ

ここは覚えておくと、比較がぐっと楽になります。次の項目は4モデルすべて共通です。

項目共通の仕様かんたんに言うと
読める量1,048,576トークン(約100万)長編小説数冊分を一度に読める
話せる量65,536トークン(約6.5万)一度の返事で本1冊分近く書ける
受け取れるもの文字・画像・音声・動画・PDF写真も録音も動画も渡せる
返してくるもの文字のみ画像や音声は作れない
自分のパソコンで動かせるかできない(Googleのサーバー経由のみ)「脳みその中身」は非公開

つまり「3.8になって読める量が増えた」「動画が扱えるようになった」といった変化はありません。違いはすべて「頭の使い方」「速さ」「値段」「細かい機能」にあります。

3. 各世代の物語(3.5 → 3.6 → 3.7 → 3.8)

3.5 Flash(5月):頭は良いが、考えすぎて高くつく新人エース

3.5 Flashは、Flashシリーズとして初めて「本格的に考えてから答える」機能と「100万トークンの大きな机」の両方を持ったモデルでした。Googleは「Proに近い賢さを、Flashの値段と速さで」と宣伝し、Geminiアプリの無料版の標準モデルにもなりました。

ところが実際に使われ始めると、困った癖が見つかります。簡単な質問にも長々と考え込んでしまうのです。しかも出力の料金が100万トークンあたり9ドルと、Flashとしては高め。結果として「一つの仕事にかかるお金」が、上位モデルのProより高くなる逆転現象まで起きました。

たとえるなら、優秀だけれど「今日のランチどうする?」と聞いても30分悩んで、その悩んだ時間まで時給で請求してくる新人です。能力はあるのに、使う側からすると扱いづらい。

ただし3.5には、後の世代にはない特技があります。ファインチューニング(自分専用に教え込む機能)に対応している唯一のモデルなのです。これは7章で詳しく説明します。

3.6 Flash(7月):ムダを省いた効率化版

3.5の「考えすぎ」を直すために作られたのが3.6です。賢さそのものはほぼ据え置き(第三者の知能指数で52点で横ばい)でしたが、使うトークンを平均17%減らし、ソフト修正の試験では最大65%も減らしました。出力料金も9ドルから7.5ドルに下がっています。

もうひとつ地味に大事な改善が「余計なことをしない」ことです。たとえば「このプログラムを見て問題点を教えて」と頼んだだけなのに、勝手に書き換え始めてしまう癖(Googleは「action bias」と呼んでいます)を減らしました。頼んでいないことをしないのは、仕事を任せる上で安心につながります。

また、この世代から「知識の締め切り日」が2025年1月から2026年3月に進みました。つまり3.6以降は、より新しい出来事を知っています。

新人だった3.5が、先輩に「悩む前にまず手を動かせ、頼まれてないことはするな」と教わって、ムダのない中堅になったのが3.6です。

3.7 Flash(8月):速くて安くて賢い、バランス型

3.6からわずか3週間で登場した3.7は、「効率化」から一歩進んで賢さそのものが伸びた世代です。ソフト修正の試験(DeepSWE)は48.6%から65.3%へ、実務知識の試験(GDPval)も1422から1525へと大きく上がりました。第三者の知能指数も52から56に上昇しています。

大きな変化が2つあります。ひとつは思考レベルを「low/medium/high」の3段階ではっきり指定できるようになったこと。以前の「何トークンまで考えていいか」という数字指定(thinking_budget)は廃止され、「浅く・ふつう・深く」という言葉で指定する方式に統一されました。もうひとつは速さで、3.6と比べて内部で考えるトークンを半分以下に減らし、応答時間を35〜45%短縮したとされています。第三者の計測でも、当時測定された中で最速クラスでした。

さらに料金面でも、100万トークンあたり入力0.75ドル・出力3.75ドルという「導入価格」が設定されました(2026年末まで)。

3.7は「軽い仕事は流し、重い仕事はギアを上げる」ことを覚えた、足の速い三男です。しかも今なら特別価格で雇える。だからこそ、単純作業を大量にこなす現場では今も一番人気です。

3.8 Flash(9月):難問に粘り強い職人

最新の3.8は、「長時間の自律作業」に狙いを絞ったモデルです。Googleは「これまでで最も賢い働き者(workhorse)」と呼んでいます。コマンド操作の試験(Terminal-Bench 2.1)は3.7の81.6%から90.8%へ跳ね上がり、銀行業務のような複雑な手順の試験(τ³-bench Banking)も30.9%から38.1%に伸びました。

面白いのは、難関知識問題(HLE)はほぼ横ばい(45.7%→45.4%)だという点です。つまり3.8は「物知りになった」のではなく、「途中でつまずいても、自分で気づいて、やり直して、最後までやり遂げる力」が上がったのです。3.7以前なら途中で止まってしまい人間が手直しする必要があった難しいバグ修正を、3.8は一回の作業で自力で解決できることが増えました。

ただし注意点があります。Google自身が「難しい課題や高い思考レベルでは、3.7より多くのトークンを使うことがある」と明記しています。粘り強く考える分、食べる量(=お金)が増えるのです。

3.8は、難しい修理を途中で諦めず、あれこれ試して必ず直してくる職人です。ただし職人は手間を惜しまないので、簡単な修理も頼み方(思考レベル)を間違えると、必要以上に時間と材料を使ってしまいます。

補足:3.8と同時に、セキュリティ専門の「3.8 Flash Cyber」という派生モデルも発表されましたが、限定プログラム(Fairwind)向けで一般には使えないため、この記事の比較対象からは外しています。

4. 数字で見る比較表

ここからは数字の話です。細かい数字を覚える必要はありません。「どの方向に、どれくらい変わったか」だけ見てください。

基本仕様と機能の違い

項目3.5 Flash3.6 Flash3.7 Flash3.8 Flash
正式提供日2026/5/192026/7/212026/8/132026/9/2
知識の締め切り2025年1月2026年3月2026年3月2026年3月
思考レベルの段階minimal / low / medium / highlow / medium / highlow / medium / highlow / medium / high
ファインチューニング(専用に教え込む)対応(唯一)非対応非対応非対応
パソコン操作の自動化(Computer Use)お試し版標準機能として組み込み対応対応(さらに統合)
Googleの位置づけ旧世代(legacy)前世代前世代(効率重視向けに継続)最新・推奨

模擬試験(ベンチマーク)の結果

読む前の大事な注意

試験の点数は、「同じ試験でも、測った時期や採点方法によって数字がずれる」ことがあります。実例として、3.7のTerminal-Bench 2.1は、3.7の発表資料では85.8%ですが、3.8の発表資料で再計測された値は81.6%です。ですから「隣どうしの比較」は信頼できても、「4つを1本のグラフに並べて伸び率を計算する」のは危険だと3つのレポートすべてが警告しています。

試験(測るもの)3.53.63.73.8読み方
Terminal-Bench 2.1
コマンド操作を自分でこなす
76.2%78.0%85.8%
(3.8資料の再計測では81.6%)
90.8%世代ごとに伸び、3.8で大きく跳ねた
DeepSWE v1.1
長期のソフト開発
約37%約48.6〜49%65.3%非公表
(一部資料は73.8%と記載)
3.7で大きく伸びた
SWE-Bench Pro
実際のバグ修正
55.1%58.7%60.4%61.6%着実に上昇
MRCR v2 128k
長文から情報を探す
77.3%91.8%97.0%非公表3.6で大きく改善
CharXiv
グラフ読み取り
84.2%85.2%84.5%86.2%ほぼ横ばい。全部が伸びるわけではない
HLE
最難関の知識問題
40.8%45.7%45.4%3.7→3.8は横ばい(わずかに低下)
GDPval-AA v2
実務の知識労働(点数が高いほど良い)
1421〜142215251550以上実務作業も改善
知能指数(第三者 Artificial Analysis)52〜55525659総合的な賢さの目安

表を眺めると、こんなことが見えてきます。3.6はムダを省きつつ長文処理を大きく改善し、3.7は賢さそのものを底上げし、3.8は「自分で作業をやり遂げる力」を伸ばした。一方で、知識問題やグラフ読み取りのような「物知り度」は、3.7と3.8でほとんど変わっていません。

5. お金の話(料金と2027年の値上げ)

APIの料金は「読ませた量(入力)」と「書かせた量(出力)」で決まり、100万トークンあたりの単価で表します。

モデル入力(100万トークン)出力(100万トークン)備考
3.5 Flash$1.50$9.00標準価格(値下げなし)
3.6 Flash$0.75(導入価格)
※資料により$1.50
$3.75(導入価格)
※資料により$7.50
10章で食い違いを説明
3.7 Flash$0.75(導入価格)$3.75(導入価格)2026/12/31まで。2027/1/1から$1.50/$7.50
3.8 Flash$0.75(導入価格)$3.75(導入価格)2026/12/31まで。2027/1/1から$1.50/$7.50

計算例:同じ仕事をさせたらいくら違う?

たとえば「100万トークン読ませて、20万トークン書かせる」仕事を1回頼んだとします(実際にコードで検算済み)。

モデル計算1回あたり
3.7 / 3.8(導入価格)$0.75 × 1 + $3.75 × 0.2$1.50
3.7 / 3.8(2027年以降)$1.50 × 1 + $7.50 × 0.2$3.00
3.5 Flash$1.50 × 1 + $9.00 × 0.2$3.30

今なら3.7/3.8のほうが3.5より約55%安く、2027年以降でも約9%安い計算です。つまり値段の面で3.5を選ぶ理由は、今も来年もありません

2027年1月の「値上げの崖」に注意

3.7と3.8(おそらく3.6も)の安さは「2026年12月31日までの導入価格」です。2027年1月1日からは入力も出力も2倍になります。年をまたいで使うサービスの予算を組むなら、今の請求額をそのまま来年に当てはめてはいけません。

「単価が同じ」でも「実際の請求」は違う

ここが初心者の方がいちばん誤解しやすいところです。3.7と3.8は単価がまったく同じですが、同じ仕事をさせたときに使うトークン量が違います

時給が同じ2人のアルバイトでも、片方が2時間で終わらせ、もう片方が3時間かけて丁寧にやれば、支払う金額は違いますよね。3.7は「さっと終わらせる人」、3.8は「難しい仕事ほど時間をかけて確実に仕上げる人」です。簡単な仕事なら3.7のほうが安く、難しい仕事なら「やり直しが減る分」3.8のほうが結果的に安くなることがあります。

また、同じ文章を何度も読ませる場合は「コンテキストキャッシュ」という仕組み(一度読んだものを覚えておいてもらう機能)を使うと、入力コストを約9割減らせます。大量の文書を扱う人は覚えておくと得です。

6. 速さの話(「モデルの速さ」と「考える深さ」は別もの)

「3.8は返事に13秒かかる」という数字を見かけることがありますが、これは思考レベルをhigh(深く考える)にしたときの値です。同じ3.8でもlow(浅く考える)にすれば、最初の返事まで約0.7秒です。

第三者による実測(Artificial Analysis)3.6 high3.7 high3.8 high3.7 low3.8 low
文字を書き出す速さ(トークン/秒)約170約287〜340約302約314
最初の返事が出るまでの時間18.5秒11.4秒13.3秒0.82秒0.70秒

※これらはGoogleの公式仕様ではなく、外部の計測です。時期や混み具合で変わります。3.7の書き出し速さが資料によって287と340の2種類あるのも、計測時期の違いによるものです。

思考レベルは「返事をする前に考える時間」です。「今何時?」と聞かれてlowなら即答、highなら腕時計を確認して、時差を計算して、念のためスマホでも確かめてから答える、という感じ。だからチャットのような「早く返してほしい」用途では、モデルの世代より思考レベルの設定のほうが大事です。

実務では「質問の難しさに応じて思考レベルを切り替える」のが定石です。3つの資料が共通して勧めているのは、こんな使い分けです。

単純な分類・抽出・短い質問 → 3.8 Flash の low ふつうの文書分析・道具の利用 → 3.8 Flash の medium 複雑なコード修正・長時間の自律作業 → 3.8 Flash の high highでトークンを使いすぎる場合 → 3.7 Flash と比べて安いほうを採用

7. 3.5にしかない特技「ファインチューニング」

ここは、3つの資料のうちClaudeのレポートだけが強調していた、しかし非常に重要な点です。

ファインチューニングとは、自社のデータを使ってAIを「自分専用に教え込む」機能です。たとえば「うちの会社のクレーム対応は必ずこの形式で書く」「この専門用語はこう分類する」といった振る舞いを、教師データで固定できます。

2026年9月時点で、Google Cloud上でこの機能を公式にサポートしているのは4モデル中3.5だけです。3.6・3.7・3.8は非対応です。

3.6以降は「優秀だが、あなたの会社の流儀は知らない新入社員」。3.5は「能力はやや劣るが、あなたの会社で何か月も教育を受けた社員」です。すでに教育済みの社員を、「新しい人のほうが地頭がいいから」という理由だけで入れ替えると、教え込んだ流儀が全部リセットされてしまいます。

ですから、すでに3.5を自社データで教え込んで使っている会社は、性能だけを見て3.8に乗り換えるのではなく、「教え込んだ3.5」と「3.8+指示文(プロンプト)+参考資料(RAG)の組み合わせ」を比べてから決めるのが安全です。逆に、ファインチューニングを使わないなら、3.5を新しく選ぶ理由はほぼありません。

8. 自分に合うモデルを選ぶ

ここまで読めば、もう自分で選べます。上から順に質問に答えてください。

Q1. 自社データでAIを教え込む(ファインチューニング)必要がある? → はい …… 3.5 Flash(新しい世代が対応するまで維持) → いいえ …… Q2へ Q2. 主な用途は「プログラム開発」や「長時間AIに作業を任せること」? → はい …… 3.8 Flash(medium〜high) → いいえ …… Q3へ Q3. チャットのように「返事の速さ」が最優先? → はい …… 3.8 Flash の low(3.7 lowも同じくらい速いので試して比較) → いいえ …… Q4へ Q4. 「使うトークン量を1円でも減らしたい」が最優先? → はい …… 3.7 Flash(Google自身が効率重視なら3.7を勧めている) → いいえ …… 3.8 Flash の medium(迷ったらこれ)

用途別の早見表

やりたいこと3.53.63.73.8おすすめ
ふつうのチャット・質問応答★★★★★★★★★★★☆★★★★★3.8 low/medium
プログラム作成・修正★★★☆★★★★★★★★☆★★★★★3.8
長時間の自律作業(AIに丸ごと任せる)★★★☆★★★★★★★★☆★★★★★3.8 high
長い文書・契約書・大量PDFの分析★★★☆★★★★☆★★★★★★★★★★3.7 か 3.8(実データで試す)
大量の単純処理(要約・分類・抽出)★★★★★★★☆★★★★★★★★★☆3.7
返事の速さ重視★★★★★★★☆★★★★☆★★★★★3.8 low
自社専用に教え込む★★★★★3.5
性能と価格のバランス★★☆★★★★★★★★☆★★★★★3.8
自分のパソコンで動かす4つとも不可

今すでに使っている人へ

3.5や3.6を使っている人は、早めに3.7か3.8への移行が勧められています。値段が安く、性能も上だからです。ただし、モデルの名前を書き換えるだけでは動かないことがあります。3.6以降は「温度(temperature)」などの古い設定が無視されたりエラーになったりし、「考える量」の指定も数字(thinking_budget)から言葉(thinking_level)に変わりました。開発者の方は、Googleの移行チェックリストに沿って確認してください。

3.7を使っている人は、急いで変える必要はありません。値段は同じなので、3.8を試してみて「やり直しが減った」「精度が上がった」と感じたら切り替え、「トークンが増えて高くなっただけ」なら3.7のままで問題ありません。

9. よくある誤解Q&A

Q. 番号が大きいほど、すべてにおいて上位互換ですか?
いいえ。3.8は「作業をやり遂げる力」は大きく伸びましたが、難関知識問題(HLE)は3.7よりわずかに低く、しかも難問では3.7より多くのトークンを使います。「最新=全部勝ち」ではありません。
Q. 3.8にすれば読める量が増えますか?
増えません。4モデルとも約100万トークンで同じです。
Q. 3.8は返事が遅いと聞きましたが?
それは「深く考える設定(high)」のときだけです。「浅く考える設定(low)」なら約0.7秒で返事が始まり、4モデル中もっとも速い部類です。
Q. 「有料で使えばデータは一切保存されない」のですか?
違います。有料版では「AIの学習には使わない」と明記されていますが、「保存しない」とは別の話です。会話は既定で55日間保存され(設定で無効化できます)、Google検索やマップ連携を使うと30日間保存されます。これは4モデル共通の仕組みで、モデルの世代とは関係ありません。機密情報を扱う場合は、モデル選びより設定の設計のほうが重要です。
Q. 3.5は古いから、もう使い道はないですか?
ファインチューニングを使っている人にとっては唯一の選択肢です。それ以外の人には、値段も性能も新世代が上なので、新しく選ぶ理由はほぼありません。Googleは古いモデルを1年ほどで引退させる傾向があるので、将来の終了も見越しておくべきです。
Q. 難しい知識問題を解かせたいのですが?
Flash系は3.7→3.8で知識問題がほとんど伸びていません。「物知り度」が主目的なら、Flashではなく上位のPro系を検討したほうがよい、と資料は指摘しています。

10. 3つの資料で食い違っていた点(正直に)

3つのAIに同じ質問をしたところ、大筋は一致していましたが、いくつか食い違いがありました。隠さずお伝えします。

3.6 Flashの料金
GeminiとClaudeのレポートは「3.6も3.7・3.8と同じ導入価格($0.75/$3.75)」、ChatGPTのレポートは「3.6は標準価格($1.50/$7.50)」としています。3つ中2つが導入価格と述べており、Google公式ドキュメントを根拠にしているClaudeのレポートのほうが一次情報に近いため、この記事では「導入価格が有力」としつつ両方を併記しました。
3.7 FlashのTerminal-Bench 2.1
85.8%(3.7の発表資料)と81.6%(3.8の発表資料での再計測)の2つがあります。これは食い違いというより「採点条件が変わった」もので、3つの資料すべてがこの点を注意喚起しています。
3.8 FlashのDeepSWE
Geminiのレポートは73.8%と具体的な数字を載せていますが、ChatGPTとClaudeのレポートは「Googleは『多くの大型モデルを上回る』とだけ述べ、数値は非公表」としています。一次情報で確認できていないため、この記事では「非公表(一部資料は73.8%)」としました。
3.7 Flashの出力速度
約287トークン/秒と約340トークン/秒の2つの値があります。どちらも同じ第三者機関の計測で、測定時期の違いと考えられます。速度は固定の仕様ではないので、目安として受け取ってください。
3.5 Flashの知能指数
52と55の2つの値がありました。同じく第三者計測の時期差とみられます。

ここからは私の解釈です。3つの資料を通して読むと、Flashシリーズの設計思想は「3.5:能力の基準づくり → 3.6:ムダの削減 → 3.7:賢さと速さの底上げ → 3.8:やり遂げる力と検証力の優先」と整理すると、ベンチマークの伸び方とGoogleの説明が最も矛盾なくつながります。3.8で「トークンを増やしてでも成功率を上げる」方向に舵を切ったのは、3.6の「とにかく節約」路線からの揺り戻しと読めます。

11. まとめ

覚えておくのは、この5つだけ

1. 4モデルの「読める量・話せる量・扱える形式」は同じ。違うのは頭の使い方と値段。

2. 新しく使うなら3.8 Flash。迷ったら思考レベルはmediumから。

3. 大量の単純作業を安く速くなら3.7 Flash。Googleも認める効率派。

4. 自社データで教え込みたい人だけ3.5 Flash。それ以外に3.5を選ぶ理由はない。

5. 3.7・3.8の安さは2026年末まで。2027年から2倍になる。

最後にひとつ。ベンチマークの点数は「模擬試験」であって、あなたの実際の仕事での出来栄えを保証するものではありません。幸い、3.7と3.8は今なら同じ値段です。ですから「まず3.8で試し、自分の仕事のサンプルで3.7と比べ、良かったほうを使う」のが、いちばん損の少ない選び方です。

主な出典

Google公式ブログ「Introducing Gemini 3.8 Flash and 3.8 Flash Cyber」 https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/3-8-flash-and-3-8-flash-cyber/
Google公式ブログ「Introducing Gemini 3.7 Flash」 https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/introducing-gemini-3-7-flash/
Google公式ブログ「Introducing Gemini 3.6 Flash, 3.5 Flash-Lite, and 3.5 Flash Cyber」 https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-3-6-flash-3-5-flash-lite-3-5-flash-cyber/
Google DeepMind モデルカード(3.5 / 3.6 / 3.7 / 3.8 Flash) https://deepmind.google/models/model-cards/gemini-3-8-flash/ ほか
Google Cloud「Developer's guide to Gemini 3.8 Flash」 https://docs.cloud.google.com/gemini-enterprise-agent-platform/models/guides/gemini-3-8-flash
Google Cloud 各モデルページ(3.5 / 3.6 / 3.7 / 3.8 Flash) https://docs.cloud.google.com/gemini-enterprise-agent-platform/models/gemini/3-8-flash ほか
Gemini API 料金 https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing
Gemini API リリースノート https://ai.google.dev/gemini-api/docs/changelog
Gemini API「What's new in Gemini 3.8 Flash」 https://ai.google.dev/gemini-api/docs/latest-model
Gemini API Zero data retention https://ai.google.dev/gemini-api/docs/zdr
Google Cloud「Introduction to tuning」 https://docs.cloud.google.com/gemini-enterprise-agent-platform/models/tuning
Artificial Analysis(第三者の速度・知能指数計測) https://artificialanalysis.ai/models/gemini-3-7-flash ほか
DataCamp「Gemini 3.8 Flash: Features, Benchmarks, and Pricing」 https://www.datacamp.com/blog/gemini-3-8-flash-cyber
9to5Google「Gemini 3.8 Flash rolling out three weeks after last release」 https://9to5google.com/2026/09/02/gemini-3-8-flash-launch/
クラスメソッド DevelopersIO「Gemini 3.7 Flashがリリースされました」 https://dev.classmethod.jp/articles/gemini-3-7-flash-released/

著者: 藤川忠彦(ふじかわ ただひろ) — 企業向けAI導入アドバイザー、神奈川県茅ヶ崎市。

等間隔に並ぶ四つの四角でGemini Flashの四世代と最新の3.8を表した表紙画像
FUJIKAWA LAB SPECIMEN 46 / 46