第5章

スライド・提案書を作る

ここからは実践編です。この章では、5枚のプレゼン資料をゼロから完成させる通し実習を行います。構成の決め方から、ページ単位の修正、PowerPoint 形式での書き出しまで、実務の流れをまるごと体験しましょう。

この章でできるようになること

実践編のはじめに — この章の進め方

第4章(伝わる指示の書き方)までは、指示の書き方や修正のやり方を、部品ごとに学んできました。この章からは、それらを組み合わせて「1つの完成品」を作ります。

題材は、多くの人がいちばんよく作るであろう「プレゼン資料(スライド)」です。作るのは、次のような架空の提案資料です。

流れは「構成を決める → 一括で生成 → ページ単位で直す → 書き出す」の4段階です。この流れは、テーマが変わってもそのまま使い回せます。

第4章の復習ポイント

一発で完成を狙わず、まず80点の下書きを出して、そこから直していくのが正しい使い方でした。この章の実習も、その前提で進めます。詳しくは第4章(伝わる指示の書き方)をご覧ください。

コツ:先に「枚数と各ページの役割」を決める

スライド作りでいちばん大事なコツは、Claude に頼む前に、自分で「何枚にするか」「各ページに何を載せるか」を決めておくことです。枚数を決めずに「提案資料を作って」とだけ頼むと、枚数も中身も Claude 任せになります。すると、あとで「思っていたのと違う」となりがちです。

提案資料の定番は、次の5枚構成です。まずはこの型を覚えてしまいましょう。

ページ役割載せる内容
1枚目表紙タイトル・ひとこと説明・提案者名
2枚目課題相手が困っていること・現状の問題
3枚目解決策自分の提案で何がどう良くなるか
4枚目具体例中身の詳細(計画表・カリキュラムなど)
5枚目まとめ要点のおさらいと「次にしてほしい行動」

この表を箇条書きにして、そのままプロンプトに入れます。第4章で学んだ「構成を順番にリスト化すると伝わる」というコツの、スライド版だと考えてください。

なぜ「課題 → 解決策」の順番なのか

提案は「困りごとに共感してから、解決策を出す」と伝わりやすくなります。いきなり「こんな教室をやります」と言うより、「こんなお悩みはありませんか?」から入るほうが、聞き手が自分ごととして聞いてくれるからです。

例題:写真教室の提案資料5枚を作る

それでは通し実習です。「趣味の写真教室を開くので、地域の人向けに提案資料を作る」という想定で進めます。

例題 1:5枚の提案資料を1つのプロンプトで生成する

下のプロンプトには、①5枚の構成リスト ②雰囲気の指定 ③色の指定、の3つが入っています。ご自身のプロジェクトのチャット欄に、そのまま貼り付けて送ってください。

  1. 新しいプロジェクトを作る
    ホーム画面の Create(新規作成)ボタンから作成します。画面の案内に従って種類を選び、「写真教室の提案」など分かりやすい名前を付けます。
  2. 下のプロンプトをコピーして送る
    左側のチャット欄に貼り付けて送信します。枠の右上のコピーボタンが使えます。
  3. 生成を待って、5枚ざっと眺める
    右側のキャンバス(デザインが表示される領域)に5枚のスライドが生成されます。この時点では細部を気にせず、構成どおりか・雰囲気が合っているかだけ確認します。
コピーして使うプロンプト
趣味の写真教室を開くための提案資料を、スライド5枚で作ってください。
地域の公民館に提出し、興味のある人に配る想定です。

【構成(1枚ずつ指定します)】
1枚目(表紙):タイトル「はじめての写真教室のご提案」、
 サブタイトル「スマホでも一眼レフでも、撮る楽しさをもう一度」、提案者名「藤川」
2枚目(課題):「写真を撮っても、いまひとつ上手くならない」という悩みを
 箇条書き3つで。例:構図がいつもワンパターン/カメラの設定が難しくて
 いつも自動任せ/撮った写真を見返す機会がない
3枚目(解決策):月2回・少人数制の写真教室を提案。特徴を3つのカードで:
 ①実際に撮り歩きながら学ぶ ②初心者専用なので気後れしない
 ③毎回ミニ講評会つきで上達が実感できる
4枚目(具体例):3か月のカリキュラム例を表で。
 1か月目=構図の基本、2か月目=光の使い方、3か月目=作品づくりと講評会
5枚目(まとめ):開催概要(毎月第2・第4土曜の午前、会場は地区公民館、
 定員8名)を載せ、最後に「まずは無料体験会へどうぞ」と呼びかける

【雰囲気】
親しみやすく、あたたかい印象。余白は多め。
落ち着いた大人向けのデザインにしてください。

【色】
ベースは生成り色(クリーム系)。
アクセントはこげ茶と、#C96F4A のようなレンガ色を使ってください。

確認ポイントは3つです。①5枚がちゃんと「表紙→課題→解決策→具体例→まとめ」の順になっているか。②4枚目にカリキュラムの表が入っているか。③全体がクリーム系のあたたかい配色になっているか。完璧でなくて大丈夫です。ずれは次の節で直します。

claude.ai/design
左:チャット
趣味の写真教室を開くための提案資料を、スライド5枚で…(上のプロンプト)
右:キャンバス
1枚目:表紙
2枚目:課題
3枚目:解決策
4枚目:具体例(カリキュラム表)
5枚目:まとめ・呼びかけ
Export Share

図:構成リスト入りのプロンプトを送ると、5枚がまとめて生成されるイメージ

逆質問が来たら、こう答える

指示にあいまいな部分があると、Claude が生成の前に質問を返してくることがあります。これを本書では「逆質問」と呼んでいます。面倒がらずに答えると、仕上がりの精度が上がります。

今回の例題で来そうな逆質問と、答え方の実例を挙げます。

逆質問の例答え方の実例
「カリキュラムの表は何行にしますか?」「3行でお願いします。1か月ごとに1行です」
「参加費の金額は入れますか?」「月2,000円と入れてください。教材費は含む、と添えてください」
「写真素材は入れますか?」「仮の画像枠だけ置いてください。あとで自分の写真に差し替えます」
「文章はどのくらい詳しく書きますか?」「配って読んでもらう資料なので、少し詳しめでお願いします」

答えるときのコツは、「はい/いいえ」だけで終わらせず、数字や理由をひとこと添えることです。「3行で。1か月ごとに1行です」のように答えると、意図まで伝わります。決めていないことを聞かれたら、「おまかせします。あとで直すかもしれません」と正直に返して構いません。

ページ単位の修正指示のやり方

5枚まとめて生成すると、「4枚は良いのに、1枚だけ気に入らない」ということがよく起きます。ここで全部を作り直させるのはもったいないです。直したいページを名指しして、そこだけ修正させましょう。やり方は2つあります。

方法1:チャットで「◯枚目の」と指定する

いちばん手軽な方法です。左のチャットで、ページ番号と対象をセットで伝えます。

コピーして使うプロンプト(ページ指定修正の例)
3枚目の特徴カードだけ修正してください。
「①実際に撮り歩きながら学ぶ」のカードを一番目立たせて、
残り2つより少し大きくしてください。他のページは変えないでください。

ポイントは最後の一文です。「他のページは変えないでください」と添えると、直してほしくないページまで変わってしまう事故を防げます。

方法2:該当ページの要素に Comment(コメント)を付ける

第3章(修正の4つの方法)で学んだインラインコメントは、スライドでも使えます。キャンバス上で直したい要素をクリックし、表示されるツールバーの Comment(コメント)を選んで、その要素への指示を書き込みます。「どの要素のことか」を言葉で説明する必要がないので、ピンポイントの修正に向いています。

claude.ai/design
左:チャット
3枚目の特徴カードだけ修正してください。①のカードを一番目立たせて…
右:キャンバス(3枚目を表示中)
特徴カード①(クリックして選択)
Comment
コメント欄:「このカードの見出しをもっと大きく」

図:ページ指定のチャット指示(左)と、要素への Comment(右)。どちらでも同じ修正ができる

使い分けの目安

「3枚目全体の雰囲気を変えたい」のようにページ丸ごとの修正はチャットで、「この見出しだけ大きく」のように場所が1点に決まる修正は Comment(コメント)で、と使い分けると迷いません。文字の打ち間違いの修正だけなら、テキストをクリックして直接書き換えるのが最速です(第3章参照)。

仕上げ:PPTX で書き出して PowerPoint で確認する

5枚が納得のいく形になったら、書き出して完成です。右上の Export(書き出し)ボタンを押し、形式の一覧から PPTX を選びます。PPTX は PowerPoint(パワーポイント)のファイル形式で、書き出したファイルは PowerPoint で開いて自分で編集できます。

  1. Export(書き出し)を押す
    キャンバス右上の Export ボタンを押し、形式の一覧から PPTX を選びます。
  2. ファイルをパソコンに保存する
    画面の案内に従って保存します。保存先(ダウンロードフォルダなど)を覚えておきましょう。
  3. PowerPoint で開いて確認する
    保存したファイルを PowerPoint で開きます。文字を1か所書き換えてみて、編集できることを確かめれば合格です。

PDF と PPTX の使い分けも、ここで覚えてしまいましょう。

形式向いている場面編集
PDF配布・印刷・提出。相手に見てもらうだけのときできない(そのぶん、どの環境でも同じ見た目)
PPTXあとで自分(や相手)が PowerPoint で手直ししたいときできる

今回の写真教室の例なら、公民館に提出したり参加者に配ったりする分は PDF、日付や参加費を毎回書き換えて使い回す手元の原本は PPTX、という使い分けになります。両方書き出しておくのがおすすめです。

書き出し後の見た目は必ず確認する

ピクセル単位の完璧な仕上げは、Claude Design の得意分野ではありません。PPTX で書き出したあとは、必ず PowerPoint で開いて、文字のはみ出しやレイアウトのずれがないか確認してください。細かいずれは PowerPoint 側で直すほうが早いこともあります。

練習問題

練習問題 1:自分のテーマで3枚の報告資料を作る

今度は5枚ではなく3枚で、身近なテーマの「報告資料」を作ってみましょう。テーマは何でも構いません(例:今月の家計のふり返り、町内会イベントの報告、旅行の記録)。頼む前に「1枚目=表紙、2枚目=◯◯、3枚目=◯◯」と役割を自分で決めてから、構成リスト入りのプロンプトを書いてください。

ヒントを見る

報告資料の定番は「表紙 → 結果(何がどうだったか)→ まとめ(分かったこと・次にすること)」の3枚です。例題1のプロンプトの【構成】部分を3枚ぶんに書き換え、【雰囲気】と【色】もテーマに合わせて変えてみましょう。

模範解答を見る
コピーして使うプロンプト(例:町内会イベントの報告)
町内会の夏祭りの報告資料を、スライド3枚で作ってください。
回覧板と一緒に配る想定です。

【構成】
1枚目(表紙):タイトル「夏祭り 開催報告」、日付「2026年7月」、
 作成者「藤川」
2枚目(結果):来場者数・模擬店の売上・アンケートの満足度を、
 3つの大きな数字で見せてください(数字は仮でかまいません)
3枚目(まとめ):良かった点2つと来年への改善点2つを箇条書きにし、
 最後に「ご協力ありがとうございました」と添えてください

【雰囲気】
明るく、お祭りらしい楽しさのあるデザイン。ただし読みやすさ優先。

【色】
ベースは白、アクセントは紺と朱色系でお願いします。

数字が未確定でも「仮でかまいません」と書けば、レイアウトを先に作れます。数字が決まったら、テキストの直接編集で差し替えれば完成です。

練習問題 2:1枚だけ「雰囲気を変えて」と指示する(ページ指定の練習)

例題1で作った写真教室の5枚のうち、5枚目(まとめ)だけ雰囲気を変える指示を出してみましょう。条件は2つです。①他の4枚は変えさせないこと。②「いい感じに」ではなく、具体的な形容で伝えること。

ヒントを見る

「5枚目だけ」「他のページは変えないでください」の2つを必ず入れます。雰囲気の形容は、第4章で学んだ「具体的な言い方」を使います。「明るく前向きに」「呼びかけの文を大きく」など、見た目の変化が想像できる言葉を選びましょう。

模範解答を見る
コピーして使うプロンプト
5枚目(まとめ)だけ雰囲気を変えてください。
最後のページなので、明るく前向きな印象にしたいです。
・「まずは無料体験会へどうぞ」の呼びかけを、ページの主役になる大きさに
・アクセントのレンガ色をこのページでは多めに使う
・余白はそのまま多めをキープ
1〜4枚目は変えないでください。

送信後は、5枚目が変わったことに加えて、1〜4枚目が変わっていないことも必ず確認しましょう。もし他のページまで変わってしまったら、「1〜4枚目を元に戻し、5枚目の変更だけ残してください」と伝えて調整します。

理解度チェック

次の項目に自信をもって「はい」と言えたら、この章は合格です。

この章の出典