伝わる指示の書き方
この章は、この教科書の心臓部です。ボタンの場所は今後変わるかもしれませんが、「Claude に何をどう伝えるか」という力は、画面が変わっても一生使えます。指示(プロンプト)の書き方を、型として身につけましょう。
- 「いい感じの」のような伝わらない言葉を、伝わる言葉に言い換えられる
- 5つの項目からなる「プロンプトの型」で指示を組み立てられる
- 色や文字の希望を、Claude に通じる形で伝えられる
- 逆質問や修正の反復を「面倒」ではなく「上達の近道」として使える
なぜ「指示の書き方」がいちばん大事なのか
Claude Design の使い方は、突きつめると「指示を書く → できたものを見る → 直してもらう」の繰り返しです。第3章(修正の4つの方法)で学んだ修正手段も、出発点となるデザインの質が高いほど少ない手数で済みます。
そして出発点の質を決めるのが、最初の指示文です。ここで大切な事実がひとつあります。
Claude は言葉にされたことしか知りません。「いい感じ」と書けば、Claude は Claude なりの「いい感じ」を作ります。それがあなたの「いい感じ」と一致する保証はありません。頭の中のイメージを、どれだけ言葉に変換できるかが勝負です。
逆に言えば、言葉にさえできれば、デザインの技術は要りません。絵が描けなくても、ソフトの操作を知らなくても、日本語で説明できれば作れます。これが Claude Design の本質です。
伝わらない言葉を、伝わる言葉に
私たちが日常でよく使う「ふんわりした形容詞」は、Claude にはほとんど伝わりません。人によって思い浮かべるものがバラバラだからです。次の表のように言い換えるだけで、結果が大きく変わります。
| ❌ 伝わらない言い方 | ⭕ 伝わる言い方 |
|---|---|
| いい感じのデザインにして | モダンで余白多めのデザインにして |
| 素敵な雰囲気で | 親しみやすく、手書き風の温かい雰囲気で |
| かっこよくして | 業務用らしく堅めに、紺色基調で |
| おしゃれにして | 白地に細めの文字で、シンプルにまとめて |
| 目立つようにして | 見出しを大きく、申し込みボタンはオレンジ色で目立たせて |
| ちゃんとした資料にして | 会社の提案書らしく、落ち着いた配色で整えて |
コツは簡単で、「誰が読んでも同じ絵を思い浮かべる言葉」を選ぶことです。「いい感じ」は百人百様ですが、「紺色基調で余白多め」なら、だいたい同じ絵になります。
具体的な形容詞でも、「モダンで、かわいくて、重厚で、にぎやかで…」と欲張ると方向性が矛盾してしまいます。雰囲気を表す言葉は2〜3個にしぼるのがちょうどよい分量です。
プロンプトの型:5つの項目で組み立てる
毎回ゼロから文章を考える必要はありません。次の5項目を順番に埋めるだけで、伝わる指示が完成します。この型は、チラシでもスライドでも Web ページでも同じように使えます。
- ① 何を作るか(種類と枚数)
「A4チラシを1枚」「スライド8枚の提案書」「1ページのWebページ」など。種類と枚数を最初に言い切ります。 - ② 誰に見せるか
「近所の60代の方向け」「取引先の役員向け」「初めて来るお客さま向け」など。相手が決まると、文字の大きさも言葉づかいも自然に決まります。 - ③ 構成を順番にリスト化
載せたい内容を上から順に箇条書きにします。例:「大きな見出し → 特徴3つ → 料金 → 申し込みボタン」。この一手間が仕上がりを最も左右します。 - ④ 雰囲気(形容詞2〜3個)
「明るく、親しみやすく」「堅めで、信頼感のある」など、前の節で学んだ「伝わる形容詞」を2〜3個。 - ⑤ 色・文字の希望
「藍色系でまとめて」「文字は大きめに」など。希望がなければ「おまかせ」でも構いませんが、あるなら必ず書きます。
実際の画面では、この型で書いた指示を左のチャットに貼るだけです。
図:型に沿った指示を左に書くと、右のキャンバスに指示した並び順が反映されやすい
とくに効くのは「③ 構成の順番リスト」
5項目の中でいちばん効果が大きいのは③です。「①目を引く見出し ②特徴3つ ③料金表 ④申し込みボタン」のように番号付きで並べると、Claude はその順番を土台にデザインを組み立てます。並び順まで指定された指示は、迷いにくいからです。
色と文字の伝え方
色の指定は、むずかしく考えなくて大丈夫です。次のどちらの言い方でも通じます。
| 言い方 | 例 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 言葉で伝える | 「藍色系」「淡いピンク」「白地に紺」 | ふだんの指示はこれで十分 |
| 色番号で伝える | 「#4338CA を基調に」 | 会社のロゴ色など、正確に合わせたいとき |
色番号(カラーコード)とは、#4338CA のように「#+英数字6桁」で色を正確に表す世界共通の書き方です。会社案内やロゴの色指定書にこの番号が載っていることが多いので、見つけたらそのまま貼り付ければ、狙った色を正確に伝えられます。
文字についても同じで、「文字は大きめに」「見出しは太く」「本文は読みやすさ優先」のような言葉で十分伝わります。
逆質問が来たら、チャンスです
指示があいまいなとき、Claude のほうから「表は何行にしますか?」「配色のご希望はありますか?」のように聞き返してくることがあります。これを逆質問と呼びます。
図:逆質問に具体的に答えるほど、次の生成の精度が上がる
逆質問が来ると「面倒だな」と感じるかもしれません。しかし逆質問は、Claude が「ここが分からないと外すかもしれない」と考えた急所を教えてくれているサインです。面倒がらずに答えるほど、仕上がりは確実に良くなります。分からない項目は「そこはおまかせします」と答えても構いません。
80点を素早く出して、直していく
完璧な指示文を1時間かけて練り上げる必要はありません。この教科書がおすすめするのは 80/20 の原則です。
- 一発で100点を狙わない。まず型に沿った指示で80点を素早く出す
- 残りの20点は、第3章で学んだ4つの修正手段で詰めていく
実物を見てから「見出しをもっと大きく」と言うほうが、見る前にすべてを予想して書くより、ずっと簡単で正確です。指示→生成→修正の反復こそが正しい使い方であって、一発で決まらないのは失敗ではありません。
細部を何十回も往復して詰めるのは、時間の面でも利用枠(プランごとの使用量の上限。詳しくは第10章)の面でも効率がよくありません。大枠が固まったら、文言の手直しはテキスト直接編集(第3章参照)など AI を介さない手段も使い分けましょう。
参考資料を渡すと、さらに精度が上がる
言葉で説明する代わりに、「こんな感じにしたい」という見本の画像や、内容が書かれた PDF・Word ファイルを先に渡す方法もあります。参考資料があると、生成の精度は大きく上がります。過去に作ったチラシ、気に入っているデザインの写真、会社のロゴなどが強力な見本になります。
ファイルの渡し方や対応形式、会社のブランド(色やロゴの決まりごと)を登録して毎回使い回す方法は、第7章(参考資料・ブランドを与える)でくわしく扱います。ここでは「言葉+見本の合わせ技が最強」とだけ覚えてください。
次の指示は、この章で学んだ観点からは残念な例です。どこがいけないのか考えながら、段階的に改善していきましょう。
いい感じの案内チラシ作って
問題点は3つあります。「何の案内か」が不明、「誰に見せるか」が不明、「いい感じ」が人によって違う、です。型の5項目を順に埋めて直します。
- ① 何を作るか
「料理教室の体験レッスン案内、A4チラシ1枚」と種類・枚数を言い切ります。 - ② 誰に見せるか
「近所に住む、料理初心者の30〜50代」と読む人を決めます。 - ③ 構成を順番に
「大きな見出し → 教室の特徴3つ → 料金 → 申し込み方法」と上から順に並べます。 - ④ 雰囲気
「明るく、親しみやすく」。形容詞は2つにしぼりました。 - ⑤ 色・文字
「オレンジ系でまとめ、文字は大きめに」。読者層に合わせた指定です。
5項目を1つの文章にまとめると、次のようになります。そのままコピーして試せます。
料理教室の体験レッスンを案内するA4チラシを1枚作ってください。 読む人は、近所に住む料理初心者の30〜50代です。 構成は上から順に、 ①目を引く大きな見出し ②教室の特徴3つ(少人数制/手ぶらでOK/その日に持ち帰れる) ③体験レッスンの料金(1回 2,000円) ④申し込み方法(電話番号と「お電話ください」の一言) の順でお願いします。 雰囲気は明るく親しみやすく。色はオレンジ系でまとめ、文字は大きめにしてください。
生成されたら、見出し・特徴3つ・料金・申し込み方法が指定した順番で並んでいるか、オレンジ系の明るい雰囲気になっているかを確認しましょう。気になる箇所があれば、第3章の方法で直せば完成です。
次の3つの指示を、この章の「伝わる言い方」と「プロンプトの型」を使って書き直してください。足りない情報(相手・構成・色など)は、自分で自由に設定してかまいません。
- (1)「かっこいい会社紹介のスライド作って」
- (2)「素敵なお店のページお願い」
- (3)「目立つポスターにして」
ヒントを見る
「かっこいい」「素敵」「目立つ」をそれぞれ具体的な形容に置き換え、①種類と枚数 ②相手 ③構成の順番 ④雰囲気 ⑤色・文字、の5項目を埋めてみましょう。
模範解答を見る
あくまで一例です。5項目が埋まっていれば、内容が違っても正解です。
会社紹介のスライドを6枚作ってください。見せる相手は初めて取引する会社の担当者です。 構成は「①表紙 ②会社概要 ③事業内容3つ ④実績 ⑤お客さまの声 ⑥連絡先」の順で。 雰囲気は業務用らしく堅めに、信頼感を重視してください。色は紺色基調でお願いします。
手作りパン屋の紹介ページを1ページ作ってください。読む人は近所の家族連れです。 構成は「①お店の写真が入る大きな見出し ②人気のパン3つ ③営業時間と地図の場所 ④ひとことメッセージ」の順で。 雰囲気は親しみやすく、手書き風の温かい感じに。色は淡いベージュと茶色でまとめてください。
夏祭りの告知ポスターを1枚作ってください。見る人は町内の子どもから高齢者までです。 構成は「①大きな見出し(第20回 ○○町夏祭り) ②日時と場所 ③催し物3つ ④主催者の連絡先」の順で。 雰囲気はにぎやかで楽しく。見出しはとても大きく、色は赤と黄色を中心に、遠くからでも読める太い文字にしてください。
あなたが実際に作ってみたいもの(チラシ・スライド・お知らせ・Webページなど、何でも結構です)を1つ思い浮かべ、型の5項目を紙やメモに書き出して、1つのプロンプトに仕上げてください。仕上がったら実際に Claude Design に貼って試してみましょう。
ヒントを見る
③の構成に迷ったら「見出し → 中身2〜3個 → 具体的な数字(料金・日時) → 相手にしてほしい行動(申し込み・連絡)」の並びが万能です。⑤が思いつかなければ「色はおまかせ、文字は大きめ」でも十分です。
模範解答を見る
正解は一つではありません。次の穴埋めテンプレートに沿って5項目が書けていれば合格です。
【何を】____を_枚作ってください。 【誰に】見る人は____です。 【構成】上から順に「①__ ②__ ③__ ④__」の並びでお願いします。 【雰囲気】____で、____な感じにしてください。 【色・文字】色は__系、文字は____でお願いします。
生成後に逆質問が来たら、具体的に答えることも忘れずに。答えるほど良くなります。
次の項目に自信をもって「はい」と言えたら、この章は合格です。